知床

北海道東部の知床半島は、地球上で流氷が流れ着く場所としては最も南に位置しています。冬期にのみ海氷が発達する「季節海氷域」であり、流氷が影響した独自の生態系を作り上げています。知床に流れ着く流氷には栄養分が含まれており、水中にすむプランクトンを育み、プランクトンを食糧とする海中生物に栄養をもたらすほか、陸と空の生物に至るまで「食物連鎖」が起こり、豊かな生態系を生み出しています。上記から、知床は海洋生物と陸上生物の相互関係の顕著な例といえます。また、知床はシマフクロウや知床スミレなどの絶滅危惧種を含む野生の動植物の宝庫であり、生物の多様性が高く評価されています。知床の地形は噴火と溶岩の流出で形成されており、半島には羅臼岳と硫黄山の2つの活火山があります。硫黄山の噴火口の近くには、構成遺産のひとつであるカムイワッカ湯の滝があり、温泉の滝として有名です。
1977年、知床に残された原生林を守る「しれとこ100平方メートル運動」と呼ばれる日本で初めてのナショナルトラスト運動が起こり、全国での募金活動により森林再生事業が行われました。また、知床エコツーリズム戦略と呼ばれる、環境を保護しながら観光を楽しむ取り組みも行われています。このように環境を保全する団体・政策などが整備されていることも世界遺産の登録に貢献しています。

【構成遺産】
・川：岩尾別川、カムイワッカ川、ルシャ川、テッパンベツ川、アウンモイ川、ルサ川、ケンネベツ川、サシルイ川、羅臼川。
・滝：フレペの滝、カムイワッカ湯の滝、カムイワッカの滝、カシュニの滝。
・湖沼：知床五湖、羅臼湖、知床沼。
・山：遠音別岳、知西別岳、天頂山、羅臼岳、サシルイ岳、知円別岳、知床硫黄山、知床岳。
・岬：プユニ岬、知床岬。